学校での勤務中のけがは公務災害として治療を受けることができます。ただこれが本当に面倒!けがをしているにもかかわらず山のような書類を作らなくてはなりません。自分も指導中に生徒とともに転んで肋骨を骨折しました。そのときに初めて知った公務災害の手続きの仕方。何が必要か、費用はどのくらいかかるのか、など2回にわたってお伝えします。参考になると嬉しいです。
公務災害になるもの
公務災害は、勤務時間内に起こったけがや病気などが補償されます。また通勤でのけがや病気も補償されます。
これらは、管理職の命令により職員に割り当てられた職務に従事する場合に補償されるものであり、公務と災害に相当な因果関係があることが必要です。
ここまででもう訳わからないですよね。簡単な例をだすと、
「これを燃やすとどうなるでしょう…」といった火を使った理科の実験をしていたとしましょう。その実験中にやけどをしてしまったとします。この場合、火をつけて実験をしていなかったら、やけどはしなかっただろうし、火を使わなかったらそもそもやけどはしない・・ということは当たり前ですね。でも授業の一環で火を扱わなければならなかったこと、火を使っているのですからやけどをするかもしれないという想定はできますよね。で、結局授業中にやけどを負っていしまったという感じです。
こんなややこしい言い回しをしなくても、仕事中のわざとでない、どうしてもしなければならなかったことに対して起こったけがは、公務災害になるということです。
ただ
・PTAのスポーツに参加中にけが
・自発的に参加した研修中にけが
・自然災害によるけが
・偶発的事故(喧嘩など)によるけが
・のどが渇いたから飲物を買いに行く途中にけが
・休憩時間の外出中にけが
などは公務災害の補償の対象にはなりません。
けがをしたら
事故の状況把握
病院に行かなくてはならないほどのけがをしたら、すぐに病院に行くのは当然です。しかしそれが校務災害にあたる場合、できるだけ落ち着いて状況を把握しておくことが大切です。
けがをしたときはパニックで、とにかく治療したい気持ちでいっぱいなのに、落ち着いて状況把握なんて、ふざけるな!という感じですが、後々この場面を覚えていないと大変なことになります。
なぜならそれらを書かなくてはならない書類が山のようにあるからです。その上、その場に第三者がいれば、その人にも状況を説明してもらう必要があります。さらに養護教諭に診てもらうことも大切です。とにかくけがの様子、その時の状況を知っている人が必要なのです。
病院の落とし穴
けがをしている場合、急いで病院に行きますが、病院を受診するにあたってここに大きな落とし穴があります。
例えば骨折の場合・・・
整形外科にいきます。その病院が東京都の指定医療機関であれば、その場で治療費を払うことはほぼありません。ところが・・・指定医療機関外であれば、治療費を払うことになります。それも
全額負担で!
つまり、公務災害では、保険証を使うことができません。3割負担ではないのです。
いつ・どこで・どんなふうにけがをしたのかを医療機関で聞かれます。その時そのまま素直に伝えると間違いなく、公務災害で保険証を使えないと言われます。
自腹で全額負担と言われると焦りますよね。10割支払いですから。
自分の肋骨骨折を例にとると、
診察代・レントゲン・処方箋代で6,000円弱でした。でもそれプラス薬局で湿布や痛み止めの薬がでたので、そこで4,000円弱。もちろん薬局でも保険は効かず10割負担です。1万円があればなんとか受診できたからいいものの、実際10割なんて支払ったことがなかったので、痛みと闘いながら治療にいくらかかるのかドキドキでした😰。
どっちにせよ、公務災害の手続きをすれば、このお金は戻ってきますが、いきなり自腹って本当に焦ります!
もちろん、公務災害と認定されなければ保険証も使えないので、10割全額自腹治療になります。このお金は戻ってきません。
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公務災害の手続き ①
ここから長い長い手続きが始まります。公務災害と認定されるまで、されてから、治癒するまでとひたすら書類との格闘が始まります。自分は何度挫折しそうになったことか。
事故発生とその証明書類の作成
↓
②管理職が公務災害と判断した場合、教育委員会に報告・書類申請
↓
③教育委員会から送られてきた事故証明書類の作成
↓
④書類がそろったら、学校の手続き担当に渡す
↓
⑤学校から教育委員会へ書類送付
↓
⑥公務災害の審議
※太字は自分がやることです。
①管理職に報告
公務災害として認められるには、当たり前ですが第一に管理職に説明が必要です。管理職がそのけがを公務災害と判断しなければ、認められません。(しかし管理職が判断したからと言って、認められないこともあります。)
②書類申請
管理職が公務災害になるのではないか…と判断した場合、教育委員会にその旨を報告すると、けがをするまでの状況説明・けがをしたあとの説明を要する書類一式が送られてきます。
③事故状況の説明書類の作成
痛みと闘いながら書類作成を余儀なくされます。またこれは自分一人では作成できず、人にお願いする書類も含まれています。おまけに提出期限もあります。(これが本当に疲れる!書類の説明文も何を言っているのかさっぱり。理解するのに時間がかかりました😓)
●公務・通勤災害認定請求の手続き方法をいう冊子を受け取り、それに基づきながら書類を作成していきます。申請書類は以下の通りです。(あまりにも読むページが多くて、学校の手続き担当者が必要な書類に〇をつけてくれました。)※自分の肋骨骨折の場合の例です。
1.公務災害認定請求書(A4用紙両面)※様式をダウンロードしたい方はこちらを☝公務災害認定請求書
表面は、自分の住所、氏名、所属学校、疾病名、疾病の部位およびその程度、共済組合証を使用したかしないかなど簡単に書けるものが多いです。疾病名は診断書の疾病名を書きます。
裏面が大変です。『災害発生の状況』の欄があります。災害発生の状況を説明する最も重要な部分です。発生状況の内容の記述が不足していたり、記述内容が添付資料と整合性が無かったりした場合は追加資料の提出を求められ、認定までに時間がかかることになります。
「いつ」「どこで」「誰と」「何をしていた時」「なぜ」「どこ」が「どのようになったのか」を文章で記入します。最後に、負傷した後の処置といつ通院し医師の治療や診断を受けたかを記入します。
2.事実証明書(A4用紙両面)※様式をダウンロードしたい方はこちらを☝事実証明書求書
これは自分が書くものではありません。被災内容を目撃した職員又は被災職員から報告を受けた職員が作成する書類です。なのでこれは、依頼しなくてはなりません。自分のために状況を細かく説明して書いてもらわなければならないことや、そのことに間違いないと証明してもらわなければなりません。とても神経を使う書類を人に書いてもらうため、書いてもらった後はお礼をお忘れなく!
(自分はその場を目撃していた教員がいなかったため、けがをした後、保健室で治療にあたってくれた養護教員に書いてもらいました)
3.災害発生状況見取り図(事実証明書の裏)※様式をダウンロードしたい方はこちらを☝災害発生状況見取り図
アクシデントが起きた瞬間の被災職員の姿勢、動作の状態、負傷部位がわかる絵を描きます。絵が苦手な人は、その時の様子を写真に撮って(人に取ってもらうなどして)貼ることも可能です。
4.症状経過書(A4用紙片面)※様式をダウンロードしたい方はこちらを☝症状経過書
これも結構しんどい書類です。被災した日から学校に書類を提出する直前までの症状経過、治療の内容(自宅等での手当も含む)医療機関等を時系列で記載します。受診した医療機関名は全部記入します。(治癒した場合は、治癒した日を記入します。)
5.既往病歴報告書(A4用紙片面)※様式をダウンロードしたい方はこちらを☝既往病歴報告書
既往病歴(今回請求する疾病は除きます。)既往病歴が無い場合も「なし」と記入して提出します。
6.児童・生徒の特長について(A4用紙片面)
児童・生徒が絡んだけがである場合、提出が必要です。児童・生徒の特長について記入し、所属長に証明印を押してもらいます。
↑ここまでが書かなくてはいけない書類です。その他提出する書類があります。
7.診断書(指定用紙有)※様式をダウンロードしたい方はこちらを☝ 診断書
受診した医療機関に作成してもらいます。作成してもらうために日数がかかるので、この用紙が渡されたらすぐに医療機関に持っていくことをお勧めします。
この診断書代は医療機関によって異なりますが3,000円~。自分が立て替えます。これは後々補償され戻ってきますが、補償されるのはこの1通だけです。傷病名が複数あり、2通以上の診断書が必要になると思われる場合は、事前に相談が必要です。
※骨折・脱臼の疑いがある場合は整形外科の診察を受けなければなりません。カイロプラクティック等の民間療法の費用は補償されませんのでご注意を!
8.業務分担がわかるもの
職員一覧表か学級担任名簿、校務分掌等の写しで、児童・生徒の使命や教職員の住所や電話番号がはいっていないものを1通。
9.授業時間割表の写し
被災職員の一週間分のもので、時程の記入、被災職員の名前が記載されたものを1通。これは週案などが最適です。
10.時程表の写し
一日の授業時程です。一週間分のものでも可。これは時間が記された時間割ですね。1通。
11.施設平面図
災害発生場所を赤で×印をつけ、「災害発生場所」と赤で記入します。
12.勤務時間の割り振り表の写し
13.出勤簿の写し
被災日属する年度分を1枚添付する。
※自分の場合、11.12.13は学校の手続き担当者がそろえてくれました。
その他にもけがの状況や場所に応じて、様々な書類の提出を求められます。何をどう揃えてよいのかわからなくなる数がありますので、担当者に尋ねながら揃えた方がよいです。
④公務災害担当者に書類を提出
教育委員会には、負傷した日からできるだけ早く書類を提出したほうがいいです。認定を受けるまでに数カ月かかることや、けがをした日が過ぎてしまうと記憶が薄れてしまうからです。あまり提出が遅いと、補償が受けられなくなる場合があります。書類を作るのは大変ですが、すみやかに作成しましょう。
学校では、教育委員会に提出する前に、書類担当者が記入しなければならない箇所があることや記載漏れなどの確認が必要なため、書類を揃えて担当者に提出する期限は、被災してから3週間くらいを目安にしましょう。期間がたっぷりあるように思えますが、申請書は細かい記入が多いことや、診断書・事故証明書の依頼をすることを考えると、あっという間に日にちが過ぎてしまいます。(手続き方法の冊子に、担当者が提出期限を書いてくれるので、その日までに確実に提出できるようにしましょう。)
⑤学校から教育委員会へ書類送付
⑥公務災害の審議
書類を提出してから申請結果が分かるまで、約1か月以上待つことになります。その間に治療が継続している場合は、領収書をきちんととっておきましょう。
ここまでで手続きが大変なことがおわかりですね。せっかく書類を揃えてもここで認定されなければ治療費は自腹です😰。
ここまでの注意点
けがをしてしまった場合、すぐに病院に行ければよいのですが、その時は行かず、何日・何か月・何年かしてその後遺症が出て病院に行った場合、公務災害として認定される場合とされない場合が出てきてしまいます。それは日にちが立てば立つほど、災害とけがとの因果関係が難しくなるからです。公務災害認定は、請求を行うこと自体に時効はありませんが、認定がされても補償を受ける権利は時効があるので、けがをしたらできるだけ早く治療を受け、労災申請をすることをお勧めします。
まとめ
仕事中にけがは嫌ですよね。そのときにすぐに病院に行き治療を受けられると、ほっとするのもつかの間、支払いがドキッとするのです。今回の内容をまとめると、
・けがをしたら、その様子をよく覚えておくこと(できればその時の写真があるとよい)
・病院に受診する場合、指定医療機関と指定外医療機関があるので注意。保険証は使えない。
・書類が手元にきたら、診断書やけがをしたときにいた人に書いてもらう書類があるので、できるだけはやく依頼する。
・けがをした日から書類提出までの症状経過を細かく書く書類がある。
今回は事故発生から公務災害と認定してもらうまでの必要提出書類までの説明をしました。
自分の場合は13枚の書類が必要でした。次回は認定されてから治療費請求までの流れを説明します。これがまた複雑!
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