はじめに
前回は、けがをしてから公務災害の請求手続きまでの説明をしました。けがをして苦しい状態での手続きは本当に大変です。けがが軽ければ、認定された後の書類はその時だけで済むのですが、長引くと医療費は増えていくし、そのたびに手続きをしなくてはならないしで、本当に面倒です。どんな手続きが必要なのかを具体的に説明していきます。
その前に…公務災害を受けるにあたり確認事項
災害発生から2年以上経過して認定請求をした場合には、公務(通勤)災害と認定されても、認定請求日から遡って2年以内の療養補償等に給付対象が制限されます。さらに、災害発生の事実確認が難しくなることも考えられますので、基金に認定請求を行う場合には、速やかに手続きを行うようにしてください。また、公務(通勤)災害と認定され、療養補償等の請求を行わない場合には、認定の事実を知り得た日の翌日から2年が経過すると、時効により補償を受ける権利が消滅するため注意が必要です。
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公務災害の手続き②
公務災害と認定されるまでの手続きはpart1で説明しました。
👉意外と知らない教員の公務災害手続きの仕方part1~東京都の場合
今回は公務災害と認定されてからの手続きについて説明したいと思います。
公務災害と認定されると届く書類
認定請求をした書類が受理されるまで約1か月かかります。認定されると、地方公務員災害補償基金から『公務員災害認定通知書』というものが2枚届きます。1枚は、支部長印の押された用紙で、被災職員名や疾病名などが書かれた用紙、もう一枚は認定番号が書かれた説明文のような用紙です。A4の普通の用紙ですが、これは病院に持っていき、治癒するまで必要な書類なので、無くさないようにしましょう。
この証明書が発行されたら、療養補償の手続きをする書類が渡されます。
療養補償の手続き
手続きをする前に、「公務・通勤災害の補償の手続きについて」の書類を一読しないといけません。受診している医療機関が指定医療機関かそうでないかで、手続きの方法が変わってくるからです。まず自分がどれに当てはまるかを下の表で確認しましょう。
必要な請求書用紙
上記の表にある様式と、その他必要な書類を説明します。
1.療養の給付請求書
(様式第5号のダウンロードしたい方はこちらをクリック)
2.療養費請求書
(様式第1号をダウンロードしたい方はこちらをクリック)
3.療養補償請求書
(様式第6号をダウンロードしたい方はこちらをクリック)
4.移送費明細書
(移送費明細書をダウンロードしたい方はこちらをクリック)
※この書類は、医療機関まで行くときに使用した電車やタクシーなどの交通機関がある場合に請求します。
5.調剤費請求明細書
(様式第6号の中にあります。3号紙と呼びます。ダウンロードはこちら)
指定医療機関での受診→手続き
指定医療機関で受診し、自分での支払いをしていない場合は、一番簡単な手続きです。
●指定医療機関とは……
公益社団法人東京都医師会に加入している医療機関(東京都医師会に加入している会員が開設又
は管理する病院及び診療所です。)
* 都内にある大部分の医療機関はこれに該当しますが、受診する際には、都医師会に加入して
いる医療機関かどうか確認してください(請求用紙が異なりますので注意してください)
指定医療機関で治療費を支払っていない または返金してもらった場合(書類の流れA)
【必要書類】
◎療養給付請求書(上記1の第5号様式書類)
◎療養費請求書(上記2の第1号様式書類)
被災職員・所属担当者が所定事項を記入後、指定医療機関に提出します。これで医療機関の処理は終わりです。
かかった治療費は、医療機関から基金へ請求されるので、被災職員が直接金銭にかかわることはありません。
医療機関が複数ある場合は、医療機関ごとに1部ずつ必要です。また療養月が長い場合、月ごとに提出する必要があります。
指定医療機関で治療費を支払った まだ返金してもらってない場合(書類の流れB)
この場合は指定医療機関外の場合と同じなので、下記で説明します。
指定医療機関外で受診→手続き
指定医療機関外の場合、治療費は自己負担で支払っているため、医療費を請求する必要があります。
指定医療機関外で治療費を支払い、返金してもらってない場合(書類の流れB)
公務災害の治療費は、最終的に地方公務員災害補償基金から支払われます。
しかし、自分に治療費を返金してもらう場合、返金の方法は2通りあります。
①医療機関が治療費を被災職員からもらう→被災職員は医療機関から明細書をもらい、それと共に支払った治療費を基金に請求する→基金から返金される
②医療機関が治療費を被災職員からもらう→被災職員は領収書と引き換えに医療機関から治療費を返金してもらう→医療機関が被災者に支払った治療費を基金に請求する→基金から医療機関に返金する
本来ならば、かかった治療費は、①の流れのように被災職員が治療費が支払われる基金に申請し、返金してもらうのですが、その間の手間暇や返金されるまでの日数を考えると、②の方法が一番早いです。
②の方法は、
公務災害認定後、自分が病院で支払った際の金額を領収書と引き換えに、病院から返金してもらい、病院は、被災職員に代わって(受領委任と言います)治療費の請求を基金にすることです。
この方法のメリットは、今までかかった治療費がその場で返金されるということです。そして、その後治療がまだ続いていた場合、治療費をその場で自分が払うことはありません。これは、薬局での支払いも同様です。
デメリットもあります。治療費を返金してもらってからは、医療機関から預かった書類を確実に学校の担当者に手渡さないといけません。この橋渡しをすることになります。(具体的には次の章で説明)
【必要書類】
◎療養補償請求書(様式第6号)
◎調剤費請求明細書(様式第6号の3)※薬局で薬をもらっている場合
治療費が払われるまでの流れ
受領委任すれば、支払った治療費はすぐ本人に返金してもらえます。お金の面では安心しますね。しかし書類のやり取りは、終わったわけではありません。今度は医療機関が基金に被災者にかかった治療費を請求しなくてはなりません。その流れを説明します。
★被災者本人★
療養補償請求書(様式第6号(表面)2までを記入し医療機関に提出。
👇受領委任の場合
★医療機関・薬局等★
療養補償請求書(様式第6号(表面)の残りを記入し、被災職員に渡す。
※この段階で、被災職員は医療機関から領収書と引き換えに治療費を返金される。
👇
★被災者本人★
医療機関から預かった療養補償請求書(様式第6号)を学校担当者に渡す。
👇
★学校★
被災者から預かった書類を教育庁の公務災害担当へ提出
👇
★教育庁公務災害担当★
書類を確認し、基金へ提出
👇
★基金★
医療機関・薬局へ支払い
療養補償請求書は、月ごとに出さないといけません。なので、治療が長引けば長引くほど、何枚も書かなくてはなりません。例えば、2回以上治療がある場合、それが1カ月の間で終わっていれば、1枚ですみますが、月を挟んで2回となると2枚必要です。
そのため療養補償請求書は、自分で何枚もコピーして持っておくように指示を受けます。
請求書を医療機関に持っていくと、その場で書いてくれるわけではないので、1~2週間後にその用紙を取りに行かなくてはなりません。
また、医療機関から預かった請求書は個人情報がたくさん記入されているため、確実に手渡しする必要があります。
療養終了について
けがが治って、医療機関の受診を必要としなくなった時をもって療養補償は終了します。これを『治ゆ』といいます。
治ゆしてから提出する書類
治療が終わったことを場合、「治ゆ報告書」を提出しなければなりません。
治癒報告書」をダウンロードしたい方はこちらをクリック
治ゆ報告書は、自分が作成するもので、診断書の証明などは必要ありません。そのため、治ゆしたことを証明する診断書を作成してもらっても、その代金は補償されません。
治ゆ報告書の書き方
①公務災害の認定番号を記入します。
②提出する年月日を記入します。
③学校名・所属・氏名を記入します。
④災害発生年月日
⑤治ゆ年月日を記入します。
⑥傷病名を書きます。これは、認定通知書の傷病名と同一にします。
⑦障害請求有無の欄は、後遺障害がない場合、障害補償請求をしない時は「無」を、後遺障害があると主治医に言われ、障害補償請求をするときは、「有」に○印をつけます。※「有」に○印をつけた場合は、後日必要書類がもらえます。
完全にけがが治り、回復していれば問題はないのですが、次のような場合にも治ゆとみなされます。
◎一般的に認められている医療行為では、現在の症状を軽減していく効果が期待できず、医療行為を中止しても現在の症状が将来も変わらないと見込まれる状態になったとき(例えば…捻挫や骨折などにおいて、しびれや痛みなどの神経症状がのこっていても一時的な痛みを抑えるだけの対処療法的な治療を行う状態になったときなど)➡症状固定といいます
※症状固定の場合、治ゆ後の通院は、健康保険証を使って治療を継続することができます。
◎基礎疾患を有していた者が公務災害により、新たに発病した場合や症状を増悪させた場合において、急性期の痛みの症状が軽減されたとき(例えば…椎間板ヘルニアの既往歴又は基礎疾患がある者が腰痛を発症した場合において、急性期の痛みがなくなり、慢性的な痛みが残る状態となったとき)➡急性症状消退といいます
これらは、まだ痛みが残り治ゆと認めたくない状況ですが、医療機関で、医学的判断が下されれば、治ゆとなります。
また治ゆをしても自然的経過により、再び症状が出てきたり悪化したりして療養を必要とする場合は、「再発認定請求」をすることができます。
治ゆ報告書を提出してから
治ゆ報告書を学校の担当者に提出することで、やっと被災職員の手続きが一通り終了です。
その後、療養補償決定通知書が届きますが、(支払われた金額や医療機関の名前が入っている書類です)これは、自分で保管しておく書類です。
まとめ
以上、公務災害の手続きを2回にわたって説明してきました。けがにはいろいろなパターンがあり、これは基本的な手続きです。
勤務先でけがをし公務災害と認定された場合、痛みと闘いながらたくさんの書類を処理しなければならないことをご理解いただけたでしょうか。
けがをしないことが一番!でも万が一公務災害になった場合、このブログが参考になると嬉しいです。
手続き・請求書の書類をもらったら、コピーを忘れずにとっておきましょう。
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